2013年10月5日土曜日

セリフから離れて、聞く状態を維持する。

10月1日 そよ風ペダル

本日のワーニャ伯父さんを使っての演技ワークは
プロンプター一人にセリフを任せてシーンを作ってみよう。
まずは最初のハードルとして、プロンプターの声が
どの役柄のセリフなのか、もしくはト書きなのかをどう伝えるか。
そこで筒井さんからの提案。
プロンプターはその役者の演技指導をするつもりで
声で先に演じてしまい、こんな感じの演技というのを伝える。
役柄を演じ分けたり、セリフの役者に演技指導をしようと視線をやるので
自然と誰へのセリフもしくはト書きなのかがわかってきます。

役者はプロンプターに信頼を寄せセリフを任せることによって、
演じることに集中できるようになります。
つまりセリフや言葉を言わなければならないという負担から自由になります。
これで何が起こるかというと、体で演技を作ることができます。
即興の演技に近いように思います。
より良い即興演技は言葉を考えることなくその場で生み出されていきます。
何を話そうとまごつくと、即興は停滞してしまいます。
事前にセリフがあるにも関わらず、その場でセリフが生まれているように見える。
セリフや脚本から役者がいかに距離をとって自由になれるか。
難しい課題を乗り越える一つのヒントがあるように感じます。

そしてまた、別の効果があることに気づきます。
人が普段の生活で話をする時、話をしながら実は同時に自分のしゃべっていることを聞きながら確認しています。
自分のしゃべっていることに反応して話が発展していくこともあります。
もちろん誰かが話しているときには、その人の話を聞いて反応しています。
プロンプターを交えて演技を作っていくという仕組みだと、
役者は自分のセリフ中であれ、相手のセリフ中であれ常に聞く状態を維持しなければなりません。
自分のセリフの時はプロンプターの声を聴かないといけないし、
相手の話しているときも、いつ自分のセリフに移ってくるかわからないので、
プロンプターへも相手役へも意識を向けていなければなりません。
この聞くという状態を維持するのは案外に難しいことです。
脚本にはセリフしか書かれていないので自分のセリフだけ言って
あとは次の自分のセリフまで待ってしまうということが起こりがちです。
自分のセリフでないときに聞く状態を続けられると
演技が続いていき、舞台に参加し続けることになります。
つまりは役柄がしっかり存在し、舞台に息づく生きることができます。
役柄の表現が豊かになるということに繋がります。
とても興味深い稽古となりました。