2013年2月6日水曜日

参加する身体、複合的な記憶、客観的な視点。

2月5日 山口クラス
 
 
ただいま山口クラスでは劇団員募集をしておりまして、
本日は稽古体験に三名の参加がありました。
少し緊張の面持ちでしたが、人数も多く全体として楽しい雰囲気で稽古が進みました。
 
初めての方もいらっしゃるということで、名前タッチゲームから。
名前を覚えるというよりも名前を呼ぶ、タッチすると順番に切り替えていくのが慣れるまで難しいようです。
コツとしては全員で一つのリズムを作り出すことではないでしょうか。
頭で考えるよりも、体で二拍の音の違うリズムを刻んで反応させる。
名前を呼ばれたりタッチされたその瞬間に準備するのではなく、常にゲームの流れに参加しておく。
舞台に立つとき、場にどのようなリズムが流れているのか感じ、
その流れにセリフや動きの指定などがなくても参加し続けることはとても重要です。
まあ、体の感覚なのでどうしたって慣れるしかないのですが。
 
 
引き続き名前を言って席を交代していくゲーム。テーマは名前と今日の朝食と今自分にかけてあげたい言葉。このゲームはそれぞれのテーマをある程度まわせるようになったらゲームを進行している途中で突然に手拍子の合図が入り、その合図に合わせてテーマを変えて続けるという展開になり実はセリフ覚えを目的としたワークになっています。
 
セリフを覚えるときに試験勉強のように暗記して覚えることは大変な困難さを伴います。
よく言われるのが役柄になりきって気持ちの流れや行動やその言葉が出てくる動機を想像して覚えること。
例えば意味のない記号や数字を覚えるのは難しいですが、
物語や人の話したエピソードはそのまま語られているのと同じようには覚えられなくても、内容だけなら記憶にとどめやすい。
これと同じように、テーマに沿って出てきた言葉は語られた意図や語った人の印象が同時に入ってくるので、ただ言葉を覚えるのとは違ってきます。
目の前に立った人が自分が演じるべき役柄になるということです。
そして、黙読でなく音読の方が記憶に残りやすい。
黙読では眼だけの刺激で記憶を行いますが、音読であれば視覚と聴覚で記憶ができます。
またこれに動きを加える(単純に歩くだけでもいい)と記憶をさらに刺激されて覚えやすくなります。
そういう意味で言葉が決まったらみんなで声に出してそれぞれの言葉を確認していきます。
そして、語られる言葉(セリフ)は覚えたものを知っているものとして発話するのではなく、その瞬間に生まれた動機によって思いついて発話されている(そのように見える)必要があります。
このために手拍子でテーマを切り替えて言葉を発するたびに新鮮に発話できることを経験していきます。
単純なゲームですが、奥深いものが隠されています。
 
 
ラジオ体操と発声の稽古をして脚本稽古へ。円陣になってセリフを横の人につないでいくことを意識しながら読み合わせをして、一つのチームが前に出ての立ち稽古。今日は立ち位置と動き方についての提案がなされていきました。舞台にあるものと他の役者さんとの位置を意識しながらセリフをしゃべっているときに生まれる衝動にしたがって動いてみる。問題が出たらその時に山口さんも交えて話し合いながら解決していく。
演じていると一列に並びがちなので、真ん中にいる人が奥に入ったりして三角形になるように意識する、立ち位置が前後でかぶったら後ろの人が移動して調整をするといったことが紹介されていました。
舞台に立ってしまうと自分が今どう見えているのかを想像するのが難しく感じられます。客観的な想像力を養うためには、別の人が演じているときにどう見えているかを観察し情報として蓄えることが必要ではないでしょうか。別のチームが演じているときにそれを見ているというのも意味のあることだと思います。
お能では誰かが舞っているときにそれを見て、自分も同時に頭の中で舞を想像して稽古をするそうです。この意識で他の方の稽古を見ることができればと感じました。